血液透析の導入前には、腕の動脈と静脈をつなぎ合せる手術を行い、「シャント」という血液回路を腕につくる必要があります。私の専門は、透析治療に欠かせない「シャント」の造設術をはじめ、トラブル時の再建術やPTA(経皮的血管形成術)などに幅広く対応できる血管外科。近隣地域にシャント関連手術を行える医療機関が少ないことから、紹介患者様も多く、PTAを含め年間400件ほどの手術を行っています。
一度作成したシャントは永久的な使用ができないことも多く、再利用のための治療や、場所を変えて再造設が必要なこともあり、自分の血管が利用できない場合は「人工血管」を用います。当院では、できる限り長持ちする良いシャントの提供を目指して、透析室にシャントエコー(超音波装置)を常備し、定期的な検査によって病変早期発見に努めています。
最も一般的なシャントは、利き腕と反対側の腕に作成する「自己血管内シャント」です。しっかり管理できれば長持ちに繋がります。しかし、自己血管内シャントは作成後すぐに使えない点や、腎不全の患者様は良好な血管の確保が難しい点から、透析を受ける可能性が高くなってきた時点でシャントを作成し、治療に備えることをお勧めしています。
シャントは、感染や、狭くなる「狭窄」、詰まってしまう「閉塞」など、さまざまなトラブルに見舞われがちですが、当院では24時間365日体制で治療に対応しているのでご安心ください。また、日常生活でシャントを守るための注意点なども、透析準備入院時に専門医から詳しくお伝えしています。
シャントの狭窄・閉塞などのトラブルは、透析医療の代表的な合併症の一つであり、当院ではPTAや血栓除去を積極的に行っています。PTAとは、血管内にバルーンカテーテルを挿入し、狭くなった部分でバルーンを拡張して、その圧力で血管を拡げる治療法のことです。閉塞したシャントも、血管内の血栓を可及的に除去し、既存のシャントの温存に努めています。
PTAの治療時間は通常30分ほどで、当院では1泊2日の入院が基本です。また、PTA実施後も、定期的なエコー検査でフォローアップを継続しているため、シャントトラブルは年々減少傾向にあり、透析中にシャントに問題が起きて緊急手術となるケースも非常に少ないです。もちろん、シャントに異変が生じた際は迅速にPTA・手術に対応し、透析治療に支障が出ないように努めています。
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○外科専門医 ○循環器専門医
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2001~自衛隊中央病院 心臓血管外科
2009~苑田第一病院 心臓血管外科
2014~現職